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ナースステーションBに早番出勤していた、同期の坂東久美子に声をかけて、伊藤恵令奈は廊下に駆け出した。

さっき自らの手で、手術準備室に寝せ着けた、複雑骨折をした女性患者が、廊下を歩き出していたのだ。

ハアハア、ハアハア、整形外科病棟の中廊下を走る伊藤恵令奈は、息を切らして複雑骨折をした患者の元へ急いだ。集中治療室、個人部屋、4人部屋の前の、中廊下を駆け抜ける。朝食を済ませた入院患者の中には、朝一番からリハビリを兼ねて、中廊下を散歩している姿も見えた。

中廊下は、4人部屋の終わりの先で、左に直角に曲がり、リネン室、コインランドリー、男性トイレ、女性トイレ、手術準備室、手術室となっていた。

複雑骨折をしている女性患者は、手術前に身につけるブルーの衣服を身につけていた。
女性患者が、歩くことは無理なのに、ふらふらしながら立っている。まるで初めて2本足でたった、赤子のようだ。

看護師の伊藤恵令奈も、患者の様子がおかしいことにすぐに、気がついた。