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ヌードモデルかんさつにっき

第4章 裸身

おしり、いくよ。彼がささやいた。

長い時間が経ったと感じたけど、実際はわからない。

ショーツに手が伸びてきた。
ただし、ずらされただけ。

もちろん恥ずかしい。

パンツ無し・性器と肛門というおまけつきでヒップラインを観察されるヌードモデルだけど、恥ずかしい。
かえって恥ずかしい。

だいたい羞恥心というのは、“周りと違う”ということから起きる。

私がテニスやってたのはスコートの末期時代だったけど、せめてチームのなかだけは露出度が揃うようにと打ち合わせてた。

純白フリルも次の試合が最後かな、と言いながら、ついに引退までアレを穿いてたっけ。

日本中の女性が恋人の手で真っ裸にされている、この夜に──私だけがほんとに中途半端な裸身にされている。
みんなとは違うから、恥ずかしい。

一人だけフリルのないアンダースコートでコートに入ったみたいに。(経験はないけど、想像はできる)

──もう限界。

長すぎる臀部の視姦にそう思い始めたころ、ようやくショーツは抜き取られることになった。

私もお尻を上げて彼の両手に協力したのに、その薄い布は左の足首に引っ掛ったまま残された。

故意かどうかは不明だが、いっそ振り払おうと脚を曲げたら、かえって膝まで落ち込んでしまった。

伏臥位って、最悪。

これで自力で真の全裸になることは不可能となり、羞恥心が薄まることはなくなった。

それを忘れさせてくれるのがいまから始まる愛撫のはずだ。

服を脱がされ、裸を見られる羞恥を上書きするほどの快感がないとしたら、誰かセックスなんてするものか。

処女などは、
露わにされた素肌への視線にどれほど緊張するのか、
ひょっとしたら愛撫は快感よりもおぞましさが勝つのではないか、
体の内部が切り裂かれる痛みに耐えられるのか──などなど、
オナニーでは不完全にしかわからない、未知の快感と恐怖に表裏一体の想像力を働かせているのだ。

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