テキストサイズ

ヌードモデルかんさつにっき

第5章 羞恥

そもそも、この低さでは、私たちのセックスは角度的に不可能だった。
つまり、指示に従っていないわけだ。

実際に後ろから犯されそうになったときは、中途半端な姿勢の羞恥と苦痛から逃れるために、自分から膝立ちに──模範的な後背位になってしまう。
つまり、私のバックスタイルはワンパターンしかなく、彼の指示に忠実に従うなら、単なる四つんばいになるだけしかない。お粗末さま。

それじゃつまらないから、
彼のリクエストを尊重し、拡大解釈して、私は自主的に体を反転させた。

正常位ともいえない、単なる棒のような仰臥の寝姿に原点回帰した。

これは性的魅力に欠ける体勢だから、変形させられるはず。
脚を開かれ、体を折り曲げられていく過程が楽しめるはず──

ところが、
指示の言葉はなく、手で触れてきた。(あら?)

まず膝を立てさせて、割り開いていく──

(えっ)

大開脚にされた。

それでも私の場合、この辱しめの体勢でさえ普通なのだから、困ったものだ。

だって、ヌードモデルだから。

中心まであからさまにした全裸の女性を囲んで、淡々とデッサン実習は行われる。
局部が見えていても、医師でもない画学生たちには関係ない。ヌードモデルにも関係ない。
要するに、「慣れ」だ。

ただし今夜は視姦だから、欲望をはらんだ視線が新鮮に恥ずかしく、怖くさえあった。

かろうじて全裸にされているという現実が、皮肉にも羞恥の分散と軽減に効果をあげた。

見られているのは“そこ”だけじゃないから、と。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ