テキストサイズ

綺麗なあの人に抱かれたい!

第8章 大好き!

 本当に恥ずかしい。
 どうして今まで気づかなかったんだろう。
 雑だって揶揄されても、仕方ないのかもしれない。

 どうしよう。
 卯月さんに失望されちゃう。
 そう思っただけで泣けてくる。
 悲しくて悔しくて、瞳に涙の膜が張っていく。

「なんで泣くんだよ」
「う、だって、卯月さんに嫌われる」
「それこそ何でだよ」

 腕で涙を拭えば、手首を掴まれた。
 そのまま開かされる。
 見上げれば、卯月さんの優しい顔がある。愛おしげな瞳で見下ろされて困惑する。顔が近づいてくる気配に反射的に瞳を閉じれば、目尻に残る涙を舐められた。

「……う、卯月さ……!」

 驚きで声が裏返った。
 顔に熱が一気に上がる。

「奈々は結構、泣き虫だよな」

 小さく笑い声をたてる卯月さんは、何故かとても上機嫌で。
 嫌われたらどうしよう、なんて不安に襲われていたのに、結果的には真逆の展開になったようで安堵する。

 でも、どうして卯月さんの機嫌がよくなったのかはわからない。聞こうと思って開きかけた口も、結局塞がれて音にならなかった。

「……何もしなくていい」
「……うん」
「俺の事だけ考えてろ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ