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綺麗なあの人に抱かれたい!

第4章 デートですか?

「奈々、なにか食べたいものあるか?」

 シャツの袖を捲りながら卯月さんが尋ねてくる。いつからか、私を名前で呼ぶようになった。

「卯月さんの作ったものなら何でも食べるよ」

 そう伝えれば、何故かじっと見つめられた。
 なんとなく不機嫌そうに見えるけど、よくわからない。首を傾げていたら、卯月さんははあ、と溜め息をついた。

「……素直すぎるのも毒だな」
「え?」
「何でもない」

 意味のわからないことを呟いて、卯月さんはそのままキッチンへ行ってしまった。
 取り残された私の頭に疑問符が浮かぶ。
 なんだろね。変な卯月さん。



 名前で読んでくれるようになった卯月さんとは逆に、私はいまだに卯月さん呼びのまま。
 「下の名前で呼んでいい」って言われた事もあるけど、4つも年上の社会人、なにより彼氏でもない人を、気軽に名前で呼ぶ勇気はなかった。
 それに、ちょっと照れくさいし。

 私はといえば、大学とバイトを行き来して、帰りに卯月さんの部屋に寄ったりして自由気ままに過ごしてる。
 たまにタケくん達と飲みに行くこともあるけれど、今は飲みだけで終わることが多い。セフレ達と遊ぶ回数はかなり減って、その分、卯月さんと会う回数が増えた。

 それに、セックスもしていない。
 卯月さんに「抱きたい」と言わせる日までセックスはしない、ビッチの意地とプライドに懸けてそう決めていた。

 その決断に、特に意味はない。
 ただ今は、卯月さん以外の男の人にあまり興味が向かないから、そんな自制をしてしまったのかもしれない。

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