もう推しとは言えない *番外編更新中
第1章 推しと彼氏
そろそろ朝練の時間だから、とポチは言う。
…睦人も来てるだろうし、何か嫌だな。
けど…他の部員に迷惑はかけられない、この大切な時期に。
ポチと並んで皆が集まっているところに行くと、睦人が爽やかな笑顔で私に近付いてきた。
まるで…亜梨沙という女の子とのことなんて、何もなかったように。
「おはよ、真帆。九嶋先生とキャッチボールしてたの?」
「う、うん…。ごめんね、待たせて。」
「いや、良いよ。でも、今度は俺とキャッチボールしてよ?」
ポンポン、と私の頭を撫でた睦人。
…これが、朝のことなんて見ていなければ、私は素直に喜んだだろうし、顔も赤くなってたと思う。
だけど、今は…。
表情が引き攣りそうになるのを、必死に抑えることしか出来なかった。
「…うん、そうだね。今度、しよっか。」
「あぁ。」
幸いにして…睦人をはじめとした皆には不審がられていないみたい。
でも、唯一、ポチだけは…呆れたように私を見ていた。