もう推しとは言えない *番外編更新中
第1章 推しと彼氏
ポチは何か言いたげだったけど。
それ以上は何も言わず、良いフォームで私の方にボールを投げる。
綺麗な放物線を描いて…。
「っ、おい!バカっ、ちゃんと見てろよ!」
「えっ、わっ!」
ボーッと…ポチの投げたボールの軌道に見惚れていたら、綺麗に私の頭の上にぶつかって跳ねた。
地味に痛い…慌ててボールを取って、ポチの方に投げる。
「…えへへ、ごめんごめん!ポチのボールの軌道が綺麗だったからさ〜!
あの放物線を描く感じ、良いよね…どんな式になるんだろう?」
「んなの考えてんじゃねーよ、バカ。こういう時くらい、数学から解放させろ。」
「バカじゃないもん。も〜、そうやって生徒をバカバカ言っていいの?」
「お前だけだしな、言うの。問題ねぇだろ?
お前だって、俺は教師なのにポチとかふざけたあだ名で呼ぶじゃねーか。」
「ふざけてないよ、ちゃんとした愛称だよ?」
(あーあ…可愛いな)
ポチみたいに可愛かったら、私も睦人に捨てられずに済んだのだろうか。
そんなことを考えてしまう…。
「…お前、田口のことは良いのか。どうすんの、これから。」
「どうって…わかんない。」
「あっそ…まぁ、俺には関係ねぇけど、周りの部員に迷惑かけるようなことすんなよ。」