もう推しとは言えない *番外編更新中
第15章 それぞれの葛藤 ※先生side
そう心の中で思っても…声に出さなければ、彼女には通じない。
椎名さんは…抑えきれなくなったのか、私に背を向けて小さく肩を震わせて泣き出す。
「…椎名さん、」
…泣かないで、なんて、私が言える立場ではない。
慰めることも、無神経な言葉をかけることも…できる立場では無い。
だけど…放っておけるわけもなくて…。
…気付いたら、自分の腕の中に椎名さんを閉じ込めていた。
「っ…さ、澤畠先生…」
「…泣いて良いですから。私が偉そうに言えることじゃないですが…、」
「先生っ…私…」
椎名さんが私の方に…身体を向ける。
涙で潤んだ椎名さんの目が…真っ直ぐに私を見つめた。
「…私、澤畠先生のことっ…好きです…」
…知ってますよ、なんて、冗談めかして言える雰囲気でもない。
何よりも…彼女には、誠実でいたいと思う。
抱き締めといて、何を言ってんだ、という感じだけど。
「…今、だけ…抱きしめてて、くれませんか…?」
私の胸に顔をすっぽり埋めさせる椎名さん。
…本当は、ダメだろう、こんなこと。だけど…。
「あなたが落ち着くまで…こうしときますから。好きなだけ、泣いてください。」