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伯爵の称号を手にする男の二つ上の兄が
生家を父から継いだ日、男は無一文当然で生家を後にした。
男は当時15歳だった。

生家から南に100キロほど下がった森の深くに
綺麗な水こそ流れるが土地は荒れ果てた村に執事のヨゼフと小さな頃から一緒に育ったクロムという名の親友の馬と僅かな持参金を持ち、五日かけてやって来た。
途中立ち止まる事もままならないほど僅かな金しかなく、
村に着いたら次期に始まる戦に行かなくてはならずあまりのんびりも出来ない男は村に着くのを急いでいた。

一方、村人はというと領主がいつも変わり落ち着かずに過ごしていた。導く者がいないのは苦労が耐えなかった。
そして前任者の領主はとても乱暴で皆に好まれなかった。
男の父親は伯爵という称号を持つ英雄であり、
男はまだ若いという噂があった。
だが、「またどうせ続かないさ。そのうちに飽きて
どこかに行ってしまうさ。」そう言う噂も流れた。

１５歳の男は英雄である父に騎士として育てられてきた。
だが経験は少なく英雄には程遠い。
しかも村につき早々に出兵する戦があった。
前領主より引き継いだ兵士と村人達。まだ何も纏めた事のない男にとって初めて会う連中ばかりだ。
皆の前に立ち、足がすくむ男。
そんな男を心配そうに横から見守る執事のヨゼフ。
兵士たちもどこか舐めた態度だ。
なかなか上手く纏まらず焦っていると、
「みんな静かにしろっ」怒鳴り声をあげた男がいた。
そいつの名はジャクソン。彼は優秀な騎士であった。
皆に慕われ実力も申し分ない。皆に剣の指導もしていた。
「新しい領主様だ。将来は伯爵となろうお方だぞ。お前たちの指揮官でもある。しっかり聞け‼︎」
皆一気に静まりかえる。皆がジーっと男を見る。
その場を一気に緊張が走った。もう後戻りはできない。
「しばらくの間聞いてもらいたい。三日後に参加予定の戦争はヘンリー国王の要請で参加となった。国王のために戦う
ことを忘れないでくれ。もちろん礼は出す。そしてこの軍をマッケン軍を皆の手で大きく強くしていきたい。
皆にぜひ力を貸してもらいたい。それと本日より領主として軍の指揮も行うイドリスマッケンジーだ、よろしく頼む。」

そう言い終えるとジャクソンが拍手をした。騎士達もそれに合わせ自然と盛り上がった。

ホッとしたイドリス。男の名はイドリス。

イドリスの挑戦が始まった。