無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

生家を出て三日目を迎えた。
時刻で言うと正午に差し掛かろうとしていところで
男と執事は足を止めた。
これから男が領主となる予定の村が少し見えて来たからだった。
立ち止まった丘から眺めた景色に
「なんと美しいんだ…」思わず男はそう洩らす。
戦での血生臭い光景やこれからの起こるであろう苦難など忘れてしまうくらいの絶景だった。
男すなわち若い騎士でありいずれ伯爵ともなる男は
これからもこの場所を訪れて絶景を眺める事になる。
この場所は男のお気に入りとなった。

遅くなったが男の名は、イドリス・マッケンジー。
この地方で名高い名家の出身であるが、男児が二人いた
ため生家を継ぐ事は出来なかった。
しかし彼には生まれ持った類稀な身体能力と
軍人として高い頭脳があった。
瞬く間に数々の勝利と称号を手にした。
そして、男の見た目は背が高く輝く艶やかな黒髪。
瞳は少しグレイがかったグリーン。
白く透き通る肌はまだ幼さが見える。
それでもイドリスの成長は凄まじいものであった。
資産はあっという間に増えて、イドリスがやって来た頃の厩舎には弱りきった馬が三頭いただけだったのにも関わらず今では戦に出れば負けない馬だけでも100頭以上から備えられている。
まだ、21歳と成人を迎えて一年しか経っていない。
勝利のたびに、軍馬や兵士を連れ帰ってきた。
若い騎士イドリスが携える軍も大きくそして力があると言う証拠だ。そして、古く手入れのされていない宮殿も瞬く間に造り替えられた。
生家を離れわずか数年ほどしか経っていない。

イドリスを突き動かしたものはなんだったのか。
無一文で追い出した父や兄を見返したかったのか。

それともイドリスを支える仲間たちなのか。

イドリスが初めて見たあの絶景かもしれない。

イドリスの仲間たちとはどういった連中なのか。
出会った頃の話からまず始めていこう。