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神の口笛

第9章 9


16歳からエマの体を見続け、ついに処女を失ったのだ。あの、エマが。

しかも相手はあのグレイ。


ソフィアにはなんとも言葉にしがたい、困惑のような感動のようなものがあった。


「それじゃ、診察しなくちゃね」

だいぶ落ち着きを取り戻した頃、ソフィアはそう言った。


以前に聞いていたので、きっとするのだろうとエマも分かっていた。

「いつするの?」

「テオヌが終わってすぐね。この小屋を出る日にするのよ」

「分かった。」


相手はあのグレイなのでおそらく性病もなければ、エマがきちんと毎日避妊薬を飲んでいる事も知っているので心配はないのだが、これも規則だ。







弥生の小屋に入って2日後、エマ宛にメッセージ付きの赤いバラが届いた。

ここには男兵士が入ることは許されないが、贈り物は規則違反にならない。

ただ、それはとても珍しい事なのでソフィアもエマも驚いた。


「親愛なるエマ、きみが戻るのを厩舎で待っているよ。ですって!」

それはレイモンドからのものだった。


ソフィアは薔薇を花瓶にうつしながら、自分の事のようにルンルンと鼻歌をうたった。

「レイモンドってどんな人なの?」

「スピリルの総隊長…。」


「あらまぁっ!すごいじゃない、エマ。やるわね!ふふ。良い人なの?」

「うん…優しいよ」

「そう。」


エマの心がグレイにだけ向いていることは百も承知だが、それでもソフィアは嬉しかった。


彼女を好いてくれる…芯の部分を理解してくれるような男がグレイの他にもいるのかもしれない。


それに、エマが異性に対して素直に“優しい”などと言うのも新鮮であった。


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