神の口笛
第9章 9
…
――――白の季節が来た。
エマは23歳、グレイは25歳となっていた。
雪が降りしきる寒い日の午後、上層部の会議が開かれた。
「王女の護衛は、やはり女が望ましい。強い女だ。」
話し合いの結果、エマが隣国スピリルの王女の護衛として任務に就くことが決定した。
レイモンドの推薦でエマの名前が挙がったのだった。
ガルダン基地の上層部は、貴重な弓の名手でもあるエマを派遣に出すのは…と渋っていたが、やがて了承した。
「待ってください…っ!」
グレイはめずらしく握りこぶしを机に振り下ろし、感情をあらわにしていた。
普段は寡黙なこの男が声を荒げた事で、多くの人間がおどろいた表情で彼を見る。
「グレイくん…。」
「なぜエマ…なぜ彼女なんです?!ほかにも優れた女兵士はいるでしょう。」
「キミがそう言うのなら応えたいところだがね…。しかし妹だからと言って特別扱いは出来ぬのだよ。」
結局、期間も未定のままエマは行ってしまう事になった。
デワトワ国は島国で、隣国とはいえ海を渡る必要がある。
そばにいなければエマを守ってやることは不可能だ…――。
グレイはこれまでで一番頭を抱えていた。
一方、エマは王女を護衛するという任務をしっかり遂行しようと前向きだった。
世界の戦争が落ち着けば、またデワトワ国に…ガルダン基地に戻れるだろう。
それまでグレイやステラに会えないのは辛いが、こういう時のために訓練を重ねてきた。
任務をこなして帰還すれば、グレイにもきっと褒めてもらえるはずだ。
…
別れの朝。
ステラやルイ、オリバーもソフィアも正門まで駆け付けた。
「しっかりね!」
「うん。」
「絶対に無事に帰ってくるのよ」
「うん。」
日頃から、別れはつきものの軍の人間だ。誰も涙などは流さないが、それでも皆せつなげな表情を浮かべていた。
用を終えたグレイが走って来ると、他の者は手を振って去っていった。
――――白の季節が来た。
エマは23歳、グレイは25歳となっていた。
雪が降りしきる寒い日の午後、上層部の会議が開かれた。
「王女の護衛は、やはり女が望ましい。強い女だ。」
話し合いの結果、エマが隣国スピリルの王女の護衛として任務に就くことが決定した。
レイモンドの推薦でエマの名前が挙がったのだった。
ガルダン基地の上層部は、貴重な弓の名手でもあるエマを派遣に出すのは…と渋っていたが、やがて了承した。
「待ってください…っ!」
グレイはめずらしく握りこぶしを机に振り下ろし、感情をあらわにしていた。
普段は寡黙なこの男が声を荒げた事で、多くの人間がおどろいた表情で彼を見る。
「グレイくん…。」
「なぜエマ…なぜ彼女なんです?!ほかにも優れた女兵士はいるでしょう。」
「キミがそう言うのなら応えたいところだがね…。しかし妹だからと言って特別扱いは出来ぬのだよ。」
結局、期間も未定のままエマは行ってしまう事になった。
デワトワ国は島国で、隣国とはいえ海を渡る必要がある。
そばにいなければエマを守ってやることは不可能だ…――。
グレイはこれまでで一番頭を抱えていた。
一方、エマは王女を護衛するという任務をしっかり遂行しようと前向きだった。
世界の戦争が落ち着けば、またデワトワ国に…ガルダン基地に戻れるだろう。
それまでグレイやステラに会えないのは辛いが、こういう時のために訓練を重ねてきた。
任務をこなして帰還すれば、グレイにもきっと褒めてもらえるはずだ。
…
別れの朝。
ステラやルイ、オリバーもソフィアも正門まで駆け付けた。
「しっかりね!」
「うん。」
「絶対に無事に帰ってくるのよ」
「うん。」
日頃から、別れはつきものの軍の人間だ。誰も涙などは流さないが、それでも皆せつなげな表情を浮かべていた。
用を終えたグレイが走って来ると、他の者は手を振って去っていった。