甘い蜜は今日もどこかで
第4章 【届かない想い】
不意に見せつける独占欲に心臓は飛び跳ねる。
バレないように必死で、奥歯を噛み締めてる。
コクコクと頷いたらやっぱりキスの嵐が降ってきて………
どうしよう、私。
こんなに簡単に堕ちちゃうものなの…?
相手は絶対にあっちゃいけないクライアントなのに。
もう、歯止めが効かないほど打つ術がないの。
このキスに腕を伸ばして応えてしまってる。
「ジロウ、ポン酢取って」
「はい、どうぞ」
たまに作りに来てくれる朝食。
焼き鮭にちょっと垂らして食べるのが好き。
さっきからジーッと見られてる気がするけどスルーしてて良いかな?
新聞見ながら朝ご飯。
勿論、すっぴんだ。
もうジロウには色々と見せてる。
エプロンしたまま一緒に食べてるジロウが箸を置いた。
それに気付くフリをするか、新聞に夢中なフリをするか。
結局「椿さん」と切り出してきた。
「ん〜?なに?」
「仕事、上手くいってるみたいですね」
「え?うん、まぁ、やっと慣れて楽しくなってきたところかな」
「それは良かったです」
「………ん?なーに?何か言いたそう」
「いや、僕はこうして椿さんの傍に居るけど……仕事してる椿さんは全く見れてないなって」
「割りかし上手くやってるよ?私もう26だよ?心配要らないって」
誤魔化せてるよね…?
ガタッと立ち上がったジロウが近くまで来るから思わず顔を上げた。
え………なに?
急に頬に触れてきた手。
フリーズしちゃったんだけど。
「なんか、椿さん、最近見たことのない顔してる」
「え……?」
「僕の知らないところで何してるんですか?」
「秘書………だよ」
「僕の勘違い?何だか、全然近くに感じない……」
フッと笑って触れてる手に自分の手を重ねた。
「可愛いね、今度はどんなヤキモチ妬いてるの?」
シュン…として脚元にお座りしちゃった。
フワフワの髪をクシャクシャしちゃう。
大型犬ね。
不安そうな顔してるから額に軽くデコピンしてやった。
「なんて顔してるの」
見上げる目が寂しそうで、落ち着く為にお茶を一口飲む。
見つめ合ってアイコンタクトしても変わらぬ表情。
だから身体ごと向き合った。