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甘い蜜は今日もどこかで

第4章 【届かない想い】






「ジロウ?どうしたの?」




何か言いたそうで言いにくそうな。
はっきりしない感じがいつもと違う。
多分、何かしら気付いてるんだよね。
目で訴えないでよ。
今は、応えれそうにない。




正面から腕を回してきてギュッと抱き締めてくるジロウは私のお腹辺りでスリスリするの。
珍しく甘えてきてる。
優しく撫でてあげることしか出来ないからそれ以上はごめんね。




「いつもの椿さん、何処に行ったんすか……?」




ドキッとした。
見透かされている。
結局、何も誤魔化せてなくて。
「此処に居るってば」すら言えなかった。




「すみません、困らせちゃって」




パッと離れて一生懸命笑ってくれるジロウに胸の奥がチクッとした。
一瞬でいつものジロウに戻ってる。
自分の中で折り合いつけてくれたのかな。
朝だし時間もないし。
申し訳ないな、と思いつつ着替えて用意して車に乗り込んだ。









それからというもの、卒なく仕事をこなし、副社長の甘い蜜に自制しながらも押し返したり押し流されたり。
週末にはまた熱いキスで翻弄されつつある。
今の今まで仕事に没頭されていたのに、眼鏡を外していきなり腰が砕けるようなキスは反則です。




「そろそろ次の段階に進みたい、ダメ?」と耳元で囁いてくる。
子宮がキュンと疼く。
ダメ………示しがつかなくなる。
試すの、試すのよ、主導権は渡しちゃダメ。




「ちゃんと想ってくれているなら契約終了後まで我慢してください」




あ、めちゃくちゃ理性と戦ってらっしゃる。
頑張れ………頑張れ。
駄々をこねる子供みたいな顔。
「椿が欲しくて欲しくて堪んないよ」と可愛く言ってくる。
ネクタイを正すフリをして私からもキスをする。
ほんの数秒、短いの。




「足りない」って言ってくるのはわかってるから2回目は少し大胆に。




「椿からのキス、嬉しい」




「では、仕事に戻ります」




「キリッとした秘書の顔に戻る瞬間も大好きだよ」




「あの、よく照れないでそんなこと言えますね?」と呆れたら真顔で「何度でも言えるよ」って最強過ぎる。
可笑しくて笑ってたら向こうも笑って。
優しい目で見つめ返してくれる。
それが最高に幸せなんだなって正直に思う。











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