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甘い蜜は今日もどこかで

第5章 【もし間に合うのなら】








引き継ぎの代行秘書が入社してきた。
何度か会社で顔を合わせている信頼出来るスペシャリストだ。
秘書課で挨拶も済ませ、副社長にも会わせた。
緊張して顔が強張っていたのは副社長の方で笑いそうになるのを堪える。




「何かそっちの会社の人って皆、レベル高いね、容姿もスキルも」と先輩秘書から言われて謙遜した。
吉原さんが全て面接して揃えた人材です。
彼女も私と同様、秘書検定やTOEIC等ビジネス関連は一通り所持している。




強いて明らかに違うところと言えば……私より積極的でハキハキした性格ってところかな。
白黒はっきりつけたがるし、動きもキビキビしてる。
THE キャリアウーマン…てとこね。




髪はミディアムウェーブ、パッチリお目々で小柄ながらも熟す仕事量は半端ないです。
速度と正確量はピカイチ。




「秋山さん、社内案内するね」




必ず使う場所と共有部分など細かく叩き込む。
彼女も一度の説明で済むからとても楽だ。
3日間は彼女に着いて引き継ぎ業務を。




「副社長って絶対藤堂さんのこと好きですよね」っていきなり言われてドキッとした。
ないない、なんて彼女には通用しなくて。
吉原さんめ、偵察してこいって言ったな?




「何だろう、あの絶対的な信頼感?初めてながら感じちゃいました、あんなふうに信頼されちゃったら辞めるに辞めれないですよね、延長だってされたんでしょ?うわ〜ループに陥りそう、規則だからってスパッと辞めれると良いですね!」




それ、笑顔で言っちゃうところ、羨ましいよ。
そうだ、公私は分けなきゃいけないし肩入れしてもいけない。
彼女の姿勢を見て改めて気付かされる。
派遣とは何か、便利屋とは何ぞや!?
彼女のような在り方が正解なのだ。




勿論、会議にも出席させてもらう。
小声や文字で説明や指導を行う。
「秋山莉奈です」と挨拶したら一通り出席者の顔と名前、役職をインプットさせる。
覚えてる途中はジッと見つめたりするので勘違いされやすい。




秋山さんみたいなタイプがニコッと微笑めばイチコロだと思う。
例えば、副社長のスーツに糸くずが付着していたとすれば。
何の躊躇いもなくサッとハンカチで取り除くことが出来るだろう。
あの一癖も二癖もある副社長さえも素で「ありがとう」と言わせちゃう強者なのだ。








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