甘い蜜は今日もどこかで
第5章 【もし間に合うのなら】
3日目となると何も教えることもないくらいしっかり業務に溶け込んでいる。
コレがUNEEDの強さ、だと思う。
吉原さんがイチから創り上げてきた理想像なのだろう。
「藤堂さん、明日って撮影か何かですか?」
秋山さんに不意打ちでそう聞かれ、辺りに人が居ないかキョロキョロ確認してから答える。
「うん、吉原さんの指名なんだけどどうもアーティストとも繋がりあるみたいで」
「え?え?誰のですか?」
「DAiKI…て知ってる?」
「ダイキ…?て、あのDAiKIですか!?」
「あのって?」
「え、めちゃくちゃ今バズってる人ですよね、セクシーが売りのシンガーソングライターで最近じゃドラマの主題歌とかCMとかもよく聴きますよ」
「うん、調べたけどね、明日はその…」
「えっ!まさかMVに出演ですか!?なんて、まさかですよね」
「そのまさかなの」
「えっー!!」
「シー!トーン抑えて」
「すみません!いや、マジですか、凄いじゃないですか」
「あ、勿論顔出しはナシだよ?レンカノしちゃってるしね、何で私なのかは不明なんだけど」
“クライアントの指名だからね〜”と言われてしまえば拒否出来ない。
面識もないのに!?って言ったら一度だけあったんだって。
ジロウと事務所に顔出した時、ちょうど吉原さんは打ち合わせ入ってて(その時のお客様だったらしい)、たまたま私を見てくださったそうで「あの子誰?」って。
“うちのキャストは高いですよ〜”と冗談で吉原さんが言ったら「これから作る楽曲にピッタリかも」って笑顔で帰っていったら後日、本当に指名してきたみたいで。
私、また高い報酬で買われたみたいです。
勿論、向こうもきちんとした契約書類を作成してきて双方が納得した上での撮影となった訳だが。
私、撮影なんて昔に一度、某アパレルメーカーでカジュアルコーデを着て撮った事はあるけど学生の時にだったし首から下だったし。