甘い蜜は今日もどこかで
第5章 【もし間に合うのなら】
今回も顔は映さないはずなんだけど何か嫌な予感するんだよね。
勉強の為に色々と過去の作品は全て観させて頂いたけど、結構際どいシーン撮られてたり……セクシーな意味で。
今回はミニアルバム制作で1つの恋愛の始まりと終わりがコンセプトらしい。
6曲全てのMVに出演する謎の恋人像が私。
「でも吉原さんが藤堂さんを指名してきたんですから自信持ってください!全力で!私、ファンなんで羨ましい限りですが、心から応援してます」
「う、うん、とりあえず手抜きはしないから安心して」
「わかってます、藤堂さんはいつも完璧ですから私の憧れなので」
「いや、そこまで褒められても困る…」
吉原さんではなく、本人からの指名…なんて言ったら秋山さん発狂するかしら。
会社の方は安心してお任せし、翌日、私はジロウと一緒に撮影するとされる現場へ泊りがけで行くことに。
現地で吉原さんも合流するそう。
勿論、ホテルは2部屋借りているし撮影以外は拘束されることはない。
スタジオ撮りとロケーション撮りがあり、撮影時間は朝の10時から始まり夜の9時まで。
途中、休憩は2時間。
1日目で着替えは5回あるのだそうで。
ヘアメイクも衣装も全て向こうが用意してくださっていて、とりあえず台本とスケジュール表は頭に入れておいた。
その身ひとつで来てくださいってどういうこと!?
吉原さんも「楽しみにしてるね〜」としか言ってくれないし。
まぁ、ジロウが傍に居てくれるから幾分気は強く持てるけど。
この撮影の流れは一応、ジロウも目を通しているはず。
何も言ってこないのはこの程度なら大丈夫だろう…という考えなのか、私なら何を言ってもやってのけるだろう…という信頼感によるものだろうか。
いまいち、掴めない。
結構際どい衣装もあるのにな。
撮影中もずっと見てると思う。
現場チェックもしなきゃだし、顔が映ってないかとか。
カメラに集中出来るのかな。
あまり見られたくないようなシーンもきっと流れ的にあるはず。
ちゃんとわかっててついてきてるのかな。
「あれ、椿さん、緊張してます?」
またバックミラー越しに覗いてくる。
「え、誰に向かって言ってるの?」
「それそれ、それが椿さんですよね」