甘い蜜は今日もどこかで
第7章 【愛したい守りたい】
すぐに吉原さんに許可を取り、急遽決まった出張に同行する事になり、その間は再度引き続き秋山さんが秘書業務を手助けする事に。
固いチームワークにより臨機応変に纏まっていく私たちを見て、秘書課から「おぉ…」と拍手が起きるほど。
時間がないので吉原さんからジロウに連絡してもらった。
すぐに社用車で出発する。
車で片道2時間ほどかかる山道を越えて○○コーポレーションがある。
幾度となく打ち合わせを繰り返しやっと纏まった大きな案件だった。
副社長もかなり力を入れていたことも間近で見ていて知っている。
今更覆されるのは正直たまったもんじゃない。
何が何でも納得させてみせる。
そんな鋭い眼差しで考えを纏めている副社長の横で運転に集中していた。
最初は会うことさえ拒否されてしまう。
何度も頭を下げて話の場を儲けようと一生懸命な姿を目の当たりにして、私も心を動かされた。
「副社長、作戦変更しましょう」
「え?」
諦めるにはまだ早い、奥の手を使うしかない。
何の為に他より多く会食までこぎつけたと思ってるの。
全てはあなたの、副社長の人脈の為です。
人を見る目は養わなきゃダメでしょ?
二転三転しそうな相手だと周りから固めておく必要がある。
「副社長、会長に連絡を」
その言葉にハッとして「わかった」と連絡し始める。
○○コーポレーションの会長と、こちらの先代社長とは旧友の仲で、一部の人間にしか知らされていないがビジネスでも深い繋がりがあるのだ。
先代社長に気に入られていた私はこの情報を持っていた。
副社長だからこそ存分にコネは使い切れ。
無事に会長と話が出来て、事なきを得る。
こっぴどく叱られたみたいで、こちらとの契約は今まで通り続行という形に落ち着いた。
「ハァ~どうなる事かと思ったけど、こんな上手くいくとも思ってなかった、ありがとう」
安堵の笑みをこぼす副社長に笑顔を返す。
もう時間的に遅いので別々の部屋を取り、近くのホテルで一泊することになった。
「安心したら腹へったな、美味しいもの食べよう」とホテル近くの料亭へ。
落ち着いた雰囲気で寛げる個室でコース料理に舌鼓を打つ。
季節の天麩羅に日本酒を飲まれる副社長に対して私はお酒は飲まずに烏龍茶を。