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甘い蜜は今日もどこかで

第8章 【ずっといつまでも】






でも、オプションはついていないので普通のデートというわけです。
これ以上こちらからアプローチすることもしなくて良い。
最後の最後にしては言い方は失礼だがめちゃくちゃ楽なレンカノだったりする。




ただ、他の人より長い時間拘束はされるけどね。
最後だ、ということを承知した上でご予約頂いたのだ。
それがご両親に会わなければならないなんて、騙すようで心苦しい。
それでも職務を遂行するのがUNEEDだ。
私はそのメンバーで指名されている。




「アキちゃんとは違う形で出逢いたかったって何度も思ったけど、レンカノでしか出逢えない運命なら出逢えたことに感謝してるよ、アキちゃんを指名して本当に良かった」




「え、最後の挨拶みたいになってますよ?まだこれからなのに」




「いや、親の前ではこんな話出来ないからさ……言えるうちに言っとくね?ありがとう、感謝してます」




きちんと私の方に向いて頭を下げてくれる。
ジャラジャラつけてたピアスはもうない。
長い襟足も破けたジーンズも、毛先だけ色が違った金髪頭も。
ギュッと手を握り返す。




「私の存在がプラスになっていたのなら良かったです」




お得意のキラースマイルで翻弄しつつ、夜の会食での打ち合わせを軽くしていた。
ご両親の前では更にラブラブで居なければならないので。




落ち度があってはならない。
完璧に演じきらなければ。
マナーや言葉遣い等全ての好みを把握済み。
しかし、ここまでしてしまうと余計に後の彼女さんに悪いんじゃ…?
ハードル上げてしまってる気がする。
そこまでこちらが気にすることでもないのかしら。




いつか、あの時の彼女はレンカノだったんだ〜なんて笑顔で言えると良いですね、なんて。
余計なお世話だね。
いかんいかん、集中しよう。




そう思っていたのにカシャン…と音がして足元を見ると、ネックレスが落ちていた。
今、私が着けていたモノで、金具が外れたのではなく、自然と千切れるように落ちた。




え……?なに……?




何かよくわからないけど、とても嫌な予感がした。
お気に入りでよく着けてたからかな。
拾ってバッグに入れたけど、いつもならこんなの気にしないのにこの時は何故か胸騒ぎを覚えた。









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