甘い蜜は今日もどこかで
第9章 【離れない永遠に】
パタパタ…と帰り支度をし、エレベーターに乗り継ぎロビーを急いで歩く。
早く会いたい……そんな横顔で会社前に車を付けて待ってくれているジロウの元へ。
定時で上がれたらたくさんの人に見られたりするけど今はわざと見せつけている。
私のダーリンはこの人だから。
「お疲れ様です、椿さん」
私を見つけると車から降りて後部座席のドアを開けてくれる。
「ジロウもお疲れ様」
そう言って笑顔で乗り込む。
会社の規定でキャストは後部座席に乗ることになっているのは、周りに恋人だと間違われない為……なんだけど、今はもう夫婦だからその枠越えちゃってるけどね。
自宅に帰れば………どんなに疲れていても求め合ってしまうのは許して欲しい、と思う。
「シャワーは?」
「後で」
「待てないの?」
「待てない」
「じゃ、いいよ」
唇塞がれて、一枚ずつ服を脱がされて。
ベッドに辿り着くまでの道に互いの服が落ちていく。
待てないのは私もだ。
そう言ってくれることを期待してわざと聞いてしまうの。
欲しい時に欲しい言葉をくれるのは本当有り難いね。
もっと大事にしなきゃって思うんだよ。
手玉に取らないでよ。
どのみち愛していくけどさ、それが当たり前に思わないで。
ジロウの残りの人生を共有させて、とはお願いしたけどこっちの余裕がなくなるのは頂けないな。
「椿………好きだよ」
これでもかと甘い声で言われても
「知ってる」としか答えない可愛げのない私だけど離さないで。
「いや、椿は僕がどれだけ椿のことを想って愛してるのかまだまだ全然わかっていないと思うよ?だから伝えさせて?もっともっと伝えていかなきゃ溢れて仕方ないんだよ」
同じことを思ったことがある。
ジロウが抱えきれないほど私のジロウに対する想いは大きいんだ、気付いてないでしょ?って。
知らなくて良い、でもちゃんと心の中に保管しておくから。
色褪せたり消えたりすることはないから安心して、永久保存版だからって。
「じゃ、伝えて…?2人の時だけね?」
「うん、だから一生傍で聞いててね」
「うーん、わかった」
「え、何で今一瞬考えたの?そこは即答で良くない?」