甘い蜜は今日もどこかで
第2章 【曖昧なカンケイ】
「人にどう思われようが関係ないよ、もしかしたら副社長が狙ってるのかもってわかったら誰も口説きに来ないだろ?」
お願いだから仕事させて。
他の秘書の方々に説明するこっちの身にもなって。
スッと無表情になった私に気付いた副社長はアタフタ。
「ごめんなさい、もうしません、怒らないで?笑顔、笑顔」
「ハハハ、ですね、仕事戻ります」
引きつり笑いで戻るも本当は怒ってなんかない。
感情の昂ぶりほど無駄なカロリー消費はないって思っているから。
だから陰でAIだなんて言われるんだ。
告白の返事は勿論NOだ。
恋愛は向いてない。
というより最初からクライアントは対象外だし。
何より私は………………
「椿さん、お疲れさまです」
ジロウが居るから。
今日ちょっと後ろの髪が跳ねてるのとか可愛過ぎる。
今の今まで気付いてないとか尊い。
こうして毎日チェックして心の中で大好きビーム出してるの知らないでしょ?
そんな日課で充分なの。
「あ、そうだ、コレ見つけたんすよ、椿さんにどうかなって」
「え、なになに?」
運転しながら紙袋を渡された。
あっ!私の大好きなお店のプリン!
ちょっと前にモンブラン食べたけどプリンは別腹。
「ありがとー」と頭を撫でてあげる。
本当は抱きつきたいけど運転中なので我慢。
「一緒に食べよ」って私が言うの待ってたんでしょ?
良いよ、お家に来ても。
「椿さん、これ洗濯しても良いですか?」
「ん〜?あ、お願い」
ソファーに掛けてた脱いだ服もちゃんと色分けしてネットに入れて洗濯してくれる。
洗濯機が回れば雑誌や本などを整理しながらフローリングワイパーもかけてくれて、主夫の鏡だよ。
いつの間にかゴミも分別してるしご飯も作ってくれてる。
私がメイク落としてる間に神業じゃん。
一緒にご飯食べてその日あったことなんかをあーだこーだ話して笑う。
「ジロウもプリン食べなよ」
「あ、はい、じゃ〜いただきます」
手渡そうとするプリンをヒョイと引いたりすり抜けたりして誂ってみる。
猫じゃらしで遊んでる気分。
「ウソウソ、はい」
「ありがとうございます」