甘い蜜は今日もどこかで
第3章 【どんなに焦がれても】
「僕は椿さんをお守りする立場にありますので、マネージャーとして当然のことです」
「ふーん、じゃ、ジロウ自身は恋愛感情なんてこれっぽっちもないって言い切れるのね?今してることもマネージャーとしてだってことね?今後一切私には何の感情も持たないしキャストの一員として扱うってことだよね?」
イテテ…と言いながらソファーの上で正座した。
「急にどうしたんですか、怒ってます?僕が来たのダメでしたか?」
「良いから答えて、今後を左右することよ」
「今後って……僕はこれからもずっと椿さんを支えていきたいし守るべき立場にあるって常々思ってます」
「違う、そんなこと聞いてるんじゃない」
あぁ、ダメだ、イライラする。
つい白黒はっきりつけたくてキツい口調になってしまう。
好きだったジロウの困り果てた顔が今は心底苛つく。
「もう、やめようかって言ってる」
「え……?」
「もうジロウに期待するのやめて良い?」
そうはっきり言ったら顔色変えてくれるんだ?
やっとわかった?
でももう遅い。
「それは、他に気持ちが向いてるからってことですか?」
少し声が低くなってる。
真剣な時のジロウだ。
もう今さらだよ。
「だったら?ていうか、そうじゃなくて常々思ってたことよ、そろそろ自分自身を解放してあげようかなって……だって迷惑でしょ?私もいつまでもジロウばっか縛るのも違うかなって……ジロウがそう思ってくれてるなら他に目を向けてみるよ」
だから何でそこで手首掴むの。
同じ目線になるように床に降りちゃって。
「クライアントは絶対にダメです、ちゃんと自覚してますよね?」
その目の奥には何を隠してるの?
それとも始めから何もない?
あぁ、こんな時でもジロウの顔、好きだなって思っちゃう。
自分で自分の首絞めて何やってんだろうね、私は。
結局、玉砕したってことだよね。
ヤバいな、明日から大丈夫か?
笑って「おはよう」て言えるかな。
「椿さん!ねぇ、ダメだよ?クライアントとそういう仲になったら即解雇だって一番わかってるはずじゃないですか!」