テキストサイズ

甘い蜜は今日もどこかで

第3章 【どんなに焦がれても】






落ち着いたみたいでまた遅くに帰っていく。
泊まらないのは2人で納得したことだから。
頑張って自制しますよ。
バイバイと手を振って見えなくなるまで見送る。
明日もその次の日もまっさらな気持ちで「おはよう」と言う為に。




私たちなら大丈夫。
でも、たまになら、ジロウに叱られてみるのも悪くないかな。
なんてね。












相変わらず秘書業務は忙しい。
常に三歩先を読んで行動、を心掛けている。
そして、急な予定変更にも柔軟に対応しなければ一人前とは言えないわね。
トラブルはあって当たり前、その後すぐの対応が大事。
いかに正確にこなしていけるかが信頼を創り上げていくもの。




「副社長、○○様が到着されました」




「うん、通して」




契約延長してから変わらない関係性を保ててる。
2人きりになっても自制してくれているのが伝わってきていて有り難い。
私は今週、レンタル妻をして、来週はレンタル彼女で1日拘束される。
2週続けて週休1日か。
しっかり勤め上げなければ。




秘書室にて仕事をしていると、他の秘書の方々に話しかけられた。




「最近、副社長機嫌良いよね、藤堂さんのお陰で平穏な毎日が過ごせてるよ、ありがとう〜」




「え、そうなんですか?私は何も……普通に仕事させて頂いてるだけですが」




「ヤダ、敬語なんて使わなくていいわよ」




「いえ、弊社の規則ですので業務中はお許しください」




「今度飲みに行こうよ」




「ええ、是非」




可愛らしい秘書の方々で急に配属された私に対しても快く迎えてくれた。
そもそも別件のプレゼン代行で来社していたし顔見知りでもあった。




「副社長直々にお願いされたんでしょ?やっぱり藤堂さん気に入られてんじゃない?もう口説かれた?」




「え………いや、えっと」




急にぶっ込んでくる秘書たちにタジタジしていると室長の男性秘書が「業務中だぞ」と間に入ってくれて助かった。
しまった、すぐに否定するべきだった。
まさかこんな話を此処でするとは思わなかったから焦る。
一瞬、ポーカーチェイスが崩れかけた。
用心、用心。









ストーリーメニュー

TOPTOPへ