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甘い蜜は今日もどこかで

第3章 【どんなに焦がれても】






「今夜の会食は1人で大丈夫だよ」




「はい、では代行車の手配だけしておきますね」




「うん、宜しく頼むよ」




初めての相手でもないし、気心知れた取引先との会食。
秘書の同席は要らないと判断したのだろう。
定時で上がる少し前に副社長は外出されて直帰する。




「またね、藤堂さん」




わざわざ秘書室の前を通って挨拶してくれる。
「行ってらっしゃいませ」と駐車場へと降りるエレベーター前までお見送りした。




「副社長の藤堂さんを見る目、普通じゃないよね?」と鋭い指摘をするのは社長秘書を務めてらっしゃる先輩秘書だ。
「その辺詳しく教えてくれな〜い?」と定時で上がれる今日、やはり飲みに行くことになった。
ジロウにも連絡してお店の名前を告げてGPSも立ち上げる。




マネージャーに何もかも見張られてるみたいで落ち着かないって他のキャストがボヤいてたのを知っている。
確かに。




会社側としてはキャストが問題を起こさないように徹底教育はしているけれども、万が一に備えて誰か1人近くで待機、応援が必要であれば会社に申請……とか何とか。
マネージャー側も規則があって色々と制約があるみたい。
でも私はジロウだから喜んで報告するけどね。




外で待たせてるのは申し訳ないけど、ジロウはジロウの仕事も抱えてる訳だし「気にしないでください」って言われてるから。
(わかりました、帰る間際に連絡ください)と返信が来た。
ほらね、ジロウが待ってるってわかっただけで安心感がある。
居るのと居ないのとでは大違い。




ザ・秘書課って感じのファッションセンスです、お2人とも。
華がある部署だからか、こうして3人揃っての退社となると目立つ。
他の部署から誘われたりするけど先輩方が「女子会なので」とやんわり断っていた。




お洒落なバーで隠れ個室みたいなソファー席にて女子会が始まる。
あ、こういうところジロウと来たいなって思っちゃう。
でもジロウはお酒弱いからな、私だけ飲んでそう。
“ちゃんとお送りする為です、セーブしてるんです!”とか言い訳してきそう。




自然とニヤけてしまい、それをめちゃくちゃ先輩方に見られてた。









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