甘い蜜は今日もどこかで
第3章 【どんなに焦がれても】
「今、もしかして副社長のこと考えてたの〜?」って冷やかされブンブン首を振る。
何度も訂正するけど副社長をあんなふうに扱えるのは藤堂さんだけだからって、でも今日は愚痴聞くよ!って雰囲気で。
気付いたらお酒も進んでて、全員がハイになりケタケタ笑ってた。
セーブしてるけど社長への愚痴もたくさん聞けて可笑しかった。
女子会あるあるの「ここだけの話」にお腹抱えて笑ってる。
お手洗いに先輩が立った際、他の席からお声が掛かったり頼んでもないメニューが届いたりと忙しい。
そのすきにジロウにメールしようとしたけど「副社長から?」ってまた誂われて携帯を仕舞う。
そしたら、本当に副社長から掛かってきてしまった。
ちょっと席を外して店の外に出た。
「藤堂です、副社長、何かありましたか?」
ザワザワしていて聴こえにくい。
外に居るのは間違いないと思った。
なかなか喋らないので繋がってるかを何度か確認しつつ。
「もしもし、副社長?藤堂です」
もしかして、知らないうちに通話状態になってるのかな?
会食してるお店は把握している。
私からは切れないけど、えっと、行くべき?どうしようか。
ザワザワと雑音が聴こえてくる中で、私の耳には確かに聴こえてきた。
ほんの僅かな消え入りそうなか細い声。
__藤……堂さん
「副社長?どうされました?会食は無事に終わりましたか?」
__うん……お見送りし終わったとこ
「そうですか、お疲れさまでした、お疲れでしょうから今夜はゆっくり湯船にでも浸かってくださいね」
__藤堂さん……外に居るの?
「はい、今日は初めてですけど秘書課の方々にお誘い受けまして○○で女子会しています」
__そうか、楽しかった?
「はい、まだ飲んでますけど、副社長は何かお急ぎでしたか?要件は何でしょう?」
__いや、ゆっくり楽しんでおいで……声が聴きたかっただけだから
また平気でこんなことを言う。
仕方のない人だ。
一線を引いているのに時々越えてこようとするのだから。
「今日何度も聴いたじゃないですか」って笑う。