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甘い蜜は今日もどこかで

第3章 【どんなに焦がれても】






__うん、でも一仕事終えたらやっぱり頭に浮かんじゃうからさ、無意識に電話かけちゃってた、邪魔してごめん、適当に誤魔化してて、もう切るよ、おやすみ




「え、あっ……副社長!?」




本当に切っちゃった。
良かったのかな…?声、元気なさそうだったけど。
え、何これ、ちょっと心配させて脳内独占してやろうってやつ?
おそらく、センチメンタルな気分になられてるのかな、と先輩方の居る個室へ戻った。




恋人の有無をしつこく聞かれたけど誤魔化しきれない人たちだったから好きな人は居ると答えた。
勿論、相手は副社長ではないと。
これは合ってる………私が好きなのはどう考えたってジロウだもん。




写真とかないです、そういや撮ったこともないかも。
今度撮ってきて、は勘弁してください。
あまり会えない人だと嘘をついたことはごめんなさい。
これ以上根掘り葉掘り聞かれるのは危険だと判断。
お酒も入っているのでポロリ発言は絶対にしちゃダメだ。




結構な量を先輩方も飲まれてタクシーを呼んで見送った。
フゥ…と一息ついてすぐにジロウに掛けようとした。
そしたら道路を挟んだ向こうに防護柵のガードレールにもたれて立っている副社長らしき人を見つける。




ジロウはもう近くに待機してるかも知れない。
だけど、項垂れている副社長を置いていくことは出来ない。
急いで信号を渡り、近くへ。




お店の名前告げたから来たの…?
先輩たちに見られたら何言われるかわかったもんじゃない。
そんな危険を犯してでも此処に来たのか。
そっと肩に触れて「大丈夫ですか」と声を掛けた。




顔を上げたらやっぱり副社長で。
「あ、藤堂さんだ」って紅い頬。
電話の時の口調とはまた違う。
立ち上がろうとしてフラつき私に寄り掛かってきた。
必死に支えるけど重い。




「副社長、あれから飲まれたんですか?どうやって此処に?」




自宅に帰らずに?
あぁ、どうしよう。
多分、めっちゃ飲んでる。
明日は休みだけど、こんなハメを外す一面もあったのね。




「藤堂さん………俺、頑張ったよ?褒めて、エヘヘ」




「はい、よく頑張りましたね、タクシー呼びますね」









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