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甘い蜜は今日もどこかで

第4章 【届かない想い】






何よりも私情を挟み、怒りの矛先を間違えている副社長に怒りが込み上げてしまった。
なるべく冷静に対処しなければならないのに珍しく冷静では居られなかった。
馬鹿じゃないの?確かめもしないで鵜呑みにする人だった?
全然信用されてないじゃん、私。




「え、何で俺が逆に怒られてるわけ?副社長の秘書として行動には充分気をつけてって話だけだよ、独身ならまだしも、変な噂は双方にデメリットだらけだろう?」




それらしき理由を並べて自分を正当化しようとしてる。
ダメだ、怒りを捨てろ。
これ以上自我を通してはならない。
ましてや目上の、私を専属契約してくださっているクライアント様だ。




「申し訳ありませんでした、以後気を付けます」




ポーカーフェイスは得意なはずでしょ。
発動しなきゃ。
ただ、すぐに行動出来ないのは、こちらの意見を何ひとつ聞かないで頭ごなしに縛り付ける、そんな人だったことに落胆してるのだ。




今までそんな人を何人も見てきたはずなのに。
理不尽なんて世の中に転がりまくっている。
クレームなんて顔色ひとつ変えずに対応出来ていたのに。
わかってる………わかってるよ。




なのに、どうして今は立ち尽くすばかりなの。




私の未熟さが露呈している。
すぐに立ち去れば良いだけなのに。
次の言葉が出てこない。
立ち上がった副社長に頬を触られるまで気付かなかった。




ハッてして後退る。
顔を背け距離を取った。
何で…?クライアント先で泣いてるの?
慌てて頬を拭う。




「すみません、目にゴミが…」なんて下手な言い訳しか出来なくて。
え…?どうしちゃったの、私。
勤務中よ!?何バカなことしてんの。
ハンカチで押さえる。
えっと、涙の止め方は………キャッ!




後ろから副社長に抱き締められた。
「ごめん」と耳元で謝られて更に溢れた。
首を振っても「本当ごめん」ってきつく抱き締められて背中越しに副社長の心音がダイレクトに伝わってくる。





「嫉妬した……ガキだ、ごめん……わかってるよ、何でもないことくらい、けど藤堂さんのことになると途端にダメになるんだ……ごめん、嫌な言い方して、格好悪くてごめん」








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