大人の俺と子どもの私
第1章 出会い
「…あ、秋ちゃん、とか…?…ダメ?」
恐る恐る聞いてくる紗南に、
「ハハッ、いいよ!たくさん呼んでくれたら嬉しい。」
優しく微笑んで返す。
そして、
「紗南」
「え?」
急に名前で呼ばれて、びっくりした顔してる。
「紗南。」
もう一回呼ぶと、照れた顔をしながらも嬉しそうにニヤニヤしちゃってる。
それを見て俺も嬉しくなってニヤける。
「フフッ、じゃあ、帰ろっか!」
そう言って俺は、右手を前に出す。
一瞬戸惑った顔をした紗南だったけど、「うん。」と言いながら目を合わせ、その手を左手でぎゅっと握り返してくれた。
これからこの手を離さないように。
この小さな手を守っていけますように。
俺たちの“家“に帰ろう。