大人の俺と子どもの私
第1章 出会い
「あ、」
と言って立ち止まり、
「秋はもう今日の勤務時間終わりだよな?」
さっきまでとは全然違う、いつものトーンで話しかけてくる。
「あぁ、もうそんな時間か。でも莉子ちゃんに夜ご飯まかせちゃってるから、一回上に行こうかな!」
「あぁそうなんだ。莉子ちゃん、いい子だぞ。」
と、さっきまで怒ってた人とは思えないニコッとスマイルまでかまして今度こそ職員室に戻っていった。
ぐっちは俺より小さいし、顔も俺と対照的なほどイカついし、怖い印象を持たれがちだけど、すごく優しくて人情が熱い。
何より子どもが大好きで、この仕事に本当に向いてると思う。
昔から憧れの兄ちゃんで一緒に働けることが嬉しかった。
俺たちがそんなやり取りをしてた間も俺の横で俯きじっとしてた紗南。
「…とりあえず、行こっか紗南。莉子ちゃんにも、謝ろう。ね?」
繋いでる手をひくように俺が歩み出すと、紗南も一歩後ろ気味でついてきてくれた。