テキストサイズ

大人の俺と子どもの私

第1章 出会い



「紗南ちゃんはね、私よりも前からここにいるんだよ。確か小学校上がる前に来たって言ってた。もう3年かな。

でもあの感じでしょ?

馴染めないんだよね。
ここの職員とも子どもたちとも。

さっきの唯の感じもわかる?」




さっきの唯は紗南の名前を出すと、明るかった顔に雲がかかっていた。




「唯はね、紗南よりってか、乳児院からここにきたから、物心つく前から施設で暮らしてるの。親からの愛を知らないから、昔から誰よりも大人に甘えたがるし、私を見て!って感じの子なんだよね。

愛情を受けたいって思いが行動にも表れてる。

そこに同い歳の紗南が同じ家に来て、唯に父親との話をしちゃったみたいなの。そこから唯はとにかく紗南を嫌って、そんなだから紗南も唯を避けるようになって…」



きっと紗南も悪気があって話したわけじゃないだろう。


楽しかった思い出を誰かに話したくなるのは普通のことだ。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ