大人の俺と子どもの私
第3章 栞の家族
「そっか…。
まぁ水曜の午後だもんね。仕事の人も多いよね。」
「はい、まぁいつものことなんで。」
ほらまた。
割と多く保護者が見に来てる中で、自分の親がいないのをまるで気をしてないかのような冷めた返事。
それに俺に考えてることを悟られないようにする為か、
さっきまであんなキラついた目で見てきたのに、今は全然合わせようとしない。
本当は来て欲しいんだろうな。
まだ小学4年生だもんね。
自分が外で頑張ってる姿、親にたくさん見てもらいたいよね。
栞ちゃんはこの話には本当に触れてほしくなさそうで、紗南と次の授業の話に切り替えてる。
「……じゃあ、次の授業もがんばってね。
栞ちゃん!
栞ちゃんのことも俺ちゃんと見てるからね。
紗南も。寝ちゃダメだよ!」
そう言ったら、なんだか照れくさそうに笑ってくれた。
「フフッ、ありがとございます。」
「…紗南別にいつも寝てないし…。」
他人の家庭環境は気安く触れていい事じゃない。
皆それぞれ抱えてるものは違う。
もしこれから深く関わることがあったら、いくらでも話を聞こう。
その小さい体で、頭で、何を考えてるのか。
何を我慢してるのか。
だから今はこの2人が、楽しそうに学校生活を送ってるのを外からそっと見守るだけにしよう。