大人の俺と子どもの私
第3章 栞の家族
「どうして?」
「…家、誰もいないから…。」
秋の問い詰めに怯えながらも、小さな声で話し出す。
「お母さん…仕事で…いつも帰り遅くて…」
「帰ってくるまで1人なの?」
「…いや…中学生のお兄ちゃんいるけど、引きこもりだから…。
去年まで学童にいたけど、今年からはもう小4だから家で待っててねって。」
「今遊びに出てること知ってるの?」
「知らない…。」
「はぁ。。
じゃあなおさら、家に帰っていなかったら心配するでしょ。」
「…ごめんなさい。」
「とりあえず、もう帰ってきてたら心配してるし、帰ろう。
送ってくから。」
「うん…。
紗南、ごめんね。
ありがとう、わがまま聞いてくれて。」
隣で黙って話を聞いていた紗南に伝えると、
「ぁ…ぅうん。
紗南の方こそ…気づいてあげられなくて、ごめん…」
紗南も謝る。
そんな私たちを見ながら秋ちゃんは、
「行くよ。
紗南は風呂入って、部屋にいなさい。」
そう言って栞ちゃんの手を引いて出て行った。