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老人ホーム

第5章 ちょっとしたハプニング

最近は、職場に行くのが憂鬱でたまらない。

いつもはそれでも田中と一緒で、会話しながら、利用者さんとも話しながらの仕事は、職場に着いてしまえばそれなりに楽しかった。ただ、今日は、田中が夜勤に入るため、まだ夜勤をしていない僕は、昼間の勤務で、一人でしなければならない。チーフは、みんなで間に合わないところは手伝うからと言うが、今日は、本館とは別の離れにある別館での勤務で、4人部屋が、4つある建物だ。別館は一人で担当することになっており、他の職員に手伝ってもらえることを期待しないほうがいい。

この建物は、もともとレクリエーションをするための建物だったが、利用者を多く受け入れるため、広場を半分くらい残し、残りを改造して居室にしたとのこと。本館とは、渡り廊下で繋がっていた。

そんなとき、看護師の本田がこちらの建物の担当でやってきた。僕を見つけるなり、

「もう排泄介助は終わったんですか?バイタル測りに来たんですが!」

というので、僕は、

「まだこれからです。」

というと、

「今まで何やってたんですか?今日は、田中さんも昼間はいないんですから、どんどんやって行かないと間に合いませんよ!」

と言った。本田の言うことは、最もだった。介護施設での介護は、時間との闘いで、一つ遅れると、どんどん時間が押して行き、休憩時間がなくなるという事態に陥る。休憩時間がなくなると、疲れから、みんなイライラしてきて、雰囲気も悪くなる。

本田の言うことは正しい。しかし、言い方に悪意があると思う。

精神的なものかもしれないが、僕は最近、緊張すると、陰部が痒くなることがあり、本田のいる前で、無意識に陰部を触っていた。本田は、

「真剣にやってるんですか?そんなところ触ってないで、どんどん仕事進めて下さい!」

と言われた。

仕事も思うように進まない状態で、本田の存在は相当キツイものだった。

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