狂愛の巣窟〜crossing of love〜
第2章 【愛しき人たちに囲まれて幸せなのです…】
そう言われてやっとピンときた。
あのシャイな男の子!?
車の中にずっと居たからよく見てなかった。
私のことをポーッとした目で見てくれていたのは知っていたけど、また甘い蜜の匂いに誘われてやって来たの…?
「あぁ、そうだったんですね、偶然?またお会いしましたね、今日初めて入ったガソリンスタンドだったんですけど、よく覚えてましたね?」
「はい、綺麗な人だったんで……って何言ってんだ?って感じですよね、すみません」
「いえいえ、あの、鍵返してもらって良いですか?」
「わわっ、すみません!はい、どうぞ」
「ありがとうございます、ではまた」
会釈して帰ろうとしたけどまた呼び止められた。
此処、スーパーの駐車場なんですけど。
「あの、僕、渡辺航平って言います、良かったらまたガソリン入れに来てください」
「はい、次は月末くらいかな?給油は」
「あ、はい、いつでも…!」
「じゃあ」
名乗ってくれたのに私からは名乗らない。
ていうか、クレジット払いしたから名前見られてるかも知れないけど。
シュン…としてるところに車で前を通る。
チラッとこっちを見たから窓を開けて手招きしたの。
近寄って来たらあまり周りには聞こえない程度のトーンで。
「次、また会えたら名前教えるね?またね、コウヘイくん」
こうしてわざわざ時間をかけて撒いておくの。
信号待ちの左折レーン。
ハンドルを握ったまま指をトントンして。
「はぁ〜、また見つけちゃったかも」
懲りない私はまだ疼く身体を持て余している。
ついさっき火照りを抜いたばかりだというのに。
30代の主婦の性欲は計り知れない。
いつもどんな時でも“女”であるべきだと思うのです。
私は、この命が尽きるまで、女で在りつづけたいと思っている。
イキながら死ねるなんて素敵ね。
この上ない悦びだわ。
常に誰かに抱かれていたいもの。
私が私でいる為に、セックスは必要不可欠なのです。
だから、帰ってきてからも。
今か今かとお待ち頂いていたのでしょうか。
帰ったとわかった途端に鳴るインターホン。
「どうされました?中岸さん」