狂愛の巣窟〜crossing of love〜
第10章 【狂愛の巣窟〜ラスト・シーン〜】
結局、一睡も出来なかった。
テレビをつけていても、放送終了後のエラー画面が出ていても一点を見つめて動けなかった。
ネットフリックスに変えても何も頭に入って来ない。
ボーッとしたまま朝を迎えて、重い身体を引きずり朝食の準備をする。
「十和子は食べないの?」
「うん、食欲なくて」
「風邪?」
何の疑いもなく額をくっつけて熱があるか見てこようとしたからとっさに避けてしまった。
大丈夫、と愛想笑いをしてオレンジジュースだけを飲むことにした。
何か言いたげだけど言葉を呑んでいる様子。
風邪っぽいことにして、移すといけないからってマスクをした。
そうすればキスもしなくて済む。
変に期待しなくて良いから。
すぐバリアを張って遮断するクセは昔から変わらないな。
全ては保身の為。
自分のことしか考えてない滑稽な私。
「なるべく早く帰るようにするから無理はしないでね?ご飯も作らなくて良いから、治るまでゆっくりしてて?また電話する」
「うん、行ってらっしゃい」
演技して見送るとソファーに雪崩込む。
頭がガンガン痛い。
本当に具合が悪くなってきた。
少し眠った方が良いだろうな。
うつらうつらしていたら、気配を感じたが瞼は開かない。
そっと足に手が這ってきて誰かがオマンコに顔を填めてきた。
熱い息がかかる。
触り方、体温、息遣いでわかる。
きっと亨さんが連絡したんだと思う。
そう確信したらパチっと目が覚めた。
ショーツを脱がそうとしていた手を止める。
起き上がり冷たい目で見たら相手は怯んだ。
「何してるの?」
第一声で私が怒っているのに気が付いたから目が泳いでる。
あなたに当たっても仕方ないのに。
「十和子さん、泣いてたの?」
「仕事休んだの?」
「有給取った」
はぁ~と大きな溜息をついて乱れた服を直していたら足元に跪ついてきた彼。
「ごめんなさい、そんな気分じゃない」
「良いよ、シなくて良い、でも傍に居させて?」
「ごめん、帰って、お願い」
「今の十和子さんは1人にさせられない」
拒むのに懐に入ってきて母性を擽るのが上手い。
でも今は流されない。
無なのよ、今の私は。
面白くないでしょ。