テキストサイズ

狂愛の巣窟〜crossing of love〜

第10章 【狂愛の巣窟〜ラスト・シーン〜】






「お願い、一颯くん……」




「今は僕1人だから……我慢しなくて良いよ、何でもするから……ベッドで寝る?」




優しい目で覗き込んで私の機嫌を取ってくれる。
追いやっても追いやっても、傍に来るのね。
自然と涙が零れ落ちて止まらなくなる。




「ごめ………ごめんなさい」




泣いてどうするの。
余計に心配かけちゃう。
違う、違うの。
傍に居て欲しいのはキミじゃない。
最低なこと思ってるのに
どうして抱き締めてくれるの。
違う、欲しいのはこの温もりじゃない。
この腕に抱かれながら想っているのはキミの血縁者だということ。




「何でそんな親父ばっかなんだよ……俺にしときなよ、本当バカ、十和子さんは大バカ者だ」




そう言いながら背中を擦る手は温かい。
嗚咽を上げて泣きじゃくる。
気を許したわけじゃない。
上手く利用してるだけ。
それでも良いの?
私、最低な女なんだよ。
もう良い加減、身を引いたら?
愛想尽きるでしょ。
どうせ一緒になれないし、
キミを幸せには出来ない。
都合良く利用してるだけなのに何でまだ構うの?




「無理だよ………私っ……立ち上がれない……無理なの、一颯くんじゃ」




ダメだとわかっているのに口が止まらない。
酷いこと言ってズタズタに傷付いてしまえば良い。
もう二度と私の元に来れなくなるくらいキミを傷付けてしまいそう。




「わかってる、わかってるから」




優しく撫でないで。
もっと怒ってよ。
ふざけるなって私を払い除けて居なくなっちゃえば?
目を覚ましてよ。
いつまで依存してるの。




「やめ…っ」




たくさん嫌な言葉投げかけたのに顔を上げたら唇塞がれた。
拒んでみたけど一颯くんの舌を受け入れてしまう。
バカだ………キミの言う通り、大バカ者だよね。
舌を噛んでキスを中断出来るのに、心の中に浸透してくる一颯くんを止める力が残っていない。




「十和子さんはずっと今のままで良い、僕が幸せにするから……そのこと忘れないで?全部受け止めてあげれるのは僕だけだから」




「うぅっ……うぅっ……」




こんな不細工な泣き顔、誰にも見せたことないのに。
どうにでもなれ、と泣きじゃくる。








ストーリーメニュー

TOPTOPへ