狂愛の巣窟〜crossing of love〜
第5章 【溺れる覚悟はありますか…】
「気持ちがないのに抱けと?」
そっと肩に手を置いて唇を重ねる。
「ダメよ、そんな風に言っちゃ、間違えて“十和子”って呼んじゃダメよ?気をつけてね」
出て行こうとする私を頑なに離そうとしない駄々っ子な面も。
「ねぇ、本当にもう帰るの?」
「帰るよ、隣だけど」
「ハァー閉じ込めておきたい」
亨さんにも言われたな。
どうして男の人はそう言うのかしら。
自分以外と関わって欲しくないのね。
もっと足掻くと良いわ。
「私と終わりたくなければ奥さんをちゃんと大事にしなさい、ほんの少しの綻びが簡単に私たちを引き裂くのよ?賢いあなたならわかるでしょ?」
渋々納得させて支配していくこの過程が本来の目的であり、一番の快楽なのかも知れません。
そのひとつである不倫も、私ひとりではこなせないもの。
外では私たちは完璧な他人を装う。
当たり障りない挨拶程度に留まらせて隣人になりすます。
それが出来て初めてご褒美として背徳なセックスが出来るのです。
その為に完璧でなければならない。
「約束守れたらたくさん愛してあげる」
「わかりました、必ず守ります」
そう言ってくれるからギリギリの時間まで何度も唇を重ねた。
「もう行くね………行くから」と何度も制止して、また重なって。
終わりそうで終わらない夢の時間を与えることで麻痺させていくの。
そういうの、得意だから。
「あっあっ……あんっ…イクっ……亨さんっ……イクっ」
「ハァハァハァ、十和子、携帯鳴ってるよ、メッセージかな?」
セックスの最中で携帯の受信音が鳴り、取って渡してくれる。
バックでまだ挿入ってるところなのに余裕ね。
ぐったりしながら受け取るけど画面に“優子”と出ていて(久しぶりー!元気ー?近々会おうよ!)とメッセージの文面が出ている。
グググッと押し込まれ寝バックにされた。
「誰?優子って」
「あぁっ……んんっ」
ねちっこいピストンは円を描くようにして一気に突き上げてくる。
上半身は亨さんの腕でホールドされていて痙攣しっ放しの身体を押さえつけている。