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主治医との結婚生活

第30章 羨ましい

大澤家に着き 玄関を開けると
暖菜が 仁王立ちで 待ち構えていた。

「〜っ 遅い!!! 何してたの!」

まるで 母親に言われる台詞。

何していたか…
なんて 暖菜には 言えないな…(笑)

「ごめん ごめん! ただいま…」

私が言い終わるか否か…
暖菜が ぎゅううっと抱きついてきた。

顔を埋め、しがみついてくる。


私は 暖菜の様子に溜息をつき、覚悟を決めた。


それから 暖菜は予想通りに私につき纏う。

私のシャツを引っ張って どこまでも付いてくる。

そして 膝の上に乗ってきて 甘える。

まるで 赤ちゃん返りでもしたみたいだ…。


「暖菜。パパの所へおいで?ママが疲れちゃうよ?」

暖菜は 一瞬 顔を上げて奏真さんを見るが、
再び 私の胸に頭を預けて ぎゅっとしがみつく。

その様子を見て 私はまた溜息をついて
暖菜の髪を撫でた。


「あらあら…。 やっぱり ママが良いのねぇ!
2人がいない間、それはそれは良い子だったのよ?」

お義母さんに言われると
暖菜は「そんな事 ない!」とでも言う様に
体を縮こませて 反抗の色を見せる。


頑張っていた分の 反動ってやつですか…。

「良い子にしてたのね。 えらかったね!」

声をかけても 返事は返ってこない。

それから 
夜ご飯の支度を手伝おうにも 
べったりして離れないし…

ご飯中も… 膝の上に座っちゃって…


最初は優しかった奏真さんも 段々怖い声になって
くるから 暖菜は余計に私から離れない。


そんなに… 
寂しい思いに させたかな…

胸に摺りつく暖菜を見ながら 罪悪感に駆られる。

私達だけ 楽しかった かな…


ポロッ… と 涙が溢れて 止まらない…


「明花ちゃん?!」

奏真さんが 私の異変に気がついて 
慌てた声を出した。


その時 
ポンッと 頭の上に手が置かれた。

「おやおや。 どうしたかな?」

見上げると 佳真先生が微笑んだ。

「…っ 佳真… 先生…」

仕事から帰って来たらしい佳真先生は
小学生の私にいつも言ってくれた言葉を口にする。

「おやおや。
折角の美人さんが 台無しだよ…?
寂しくなっちゃったのかい?(笑)」

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