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主治医との結婚生活

第31章 奏真の思い

付き合い出してから 初めて知った…。

明花ちゃんは 甘える事が苦手。

甘える事が 悪い事だと思っている。

自分の本心に蓋をして 見ない様にして
無理矢理に笑顔を作る。


最初は なんでか わからなかった。

ソレが 母子関係からきていると知ったのは
結婚を決めてから。


そして 結婚する時に初めて 篠宮家の血をひく子 
だと知った。


篠宮家と言えば 
実家がある田舎の大地主だった家柄。

田舎の人達は皆、篠宮家を崇拝している。

僕も… 崇拝まではいかなくとも
篠宮家がいかに由緒正しい家柄であるかくらいは
知っていた。

この土地で生まれ育った者なら その血に 
刻まれているのかも知れない。

さらに 大澤診療所は
先祖代々 篠宮家のお抱え医師でもあった。

だから…

篠宮 百合子様 という存在は 僕の中でも 
気に留める人物だった。


でも まさか 
明花ちゃんのお祖母ちゃんが 百合子様 だった
なんて…!

聞いた時は ショックとパニックを起こした。


… 結婚 していいのかな…?
許して 貰えるのだろうか…?


実家で 父親からその事実を聞き、動揺している所に
百合子様が 現れた。


上品に着物を着こなした 百合子様は 白い肌に
大きな瞳。形の良い唇と鼻 をしていた。

明花ちゃんが歳を重ねたら こうなるのだろうな…
と 容易に想像がつくくらい似ていた。


「奏真さん 明花ちゃんをよろしくお願いします。」

手をつき 深々と きれいなお辞儀をされ、慌てた。

「篠宮家は 私の代で終わりです。
明花ちゃんには 関係のない話です。
そんな事よりも どうか あの子を幸せにして
やって下さい。」

それから 百合子様は 
明花ちゃんの母、梓さんの話を始めた。


梓さんが 親子関係を絶縁した状態で 
この土地を離れた事。

好きな男性と駆け落ち。
家族を築き、跡取りとしての役目を放棄した事。

そして 明花ちゃんが3歳の時に 未亡人となり、
美容師として忙しく働き、明花ちゃんを
育ててきた と。

そんな 母を見て育った明花ちゃんは
構って貰いたくても 寂しくても
その胸の内を隠して 気丈に笑顔を作る子に
なってしまった… と

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