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主治医との結婚生活

第31章 奏真の思い

百合子様は そんな明花ちゃんをとても心配
していた。

僕にも…
思い当たる節があった。


おずおずと 自信が無さそうに 僕に触れて
くるから…
僕が 抱きしめると
「ごめ…っ なさい…」
涙を流しながら 謝ってきたりした。

アレは 寂しいって 甘える事が良く無い事だと
思っているからなんだ って、その時初めて 
気がついた。


それから 僕は…
すごく 明花ちゃんを愛しく感じて…

これからは いっぱい甘えさせてあげたい って…

子供時代に 与えられなかった愛情分も 
僕が あげたい…! って

そう 強く思った。



結婚式は 父の希望で
この土地の神社で挙げる事にした。

「篠宮家の娘さんを お嫁さんに貰うなら
この土地の神々に お許しを 頂かないと
ご先祖様にも 顔向けが出来ない。
申し訳ないけど 結婚式は
この土地で 挙げてくれないかな。」

そう言われて 決めたのだが、

明花ちゃんの母、梓さんは 参列しないと
言ってきた。


「仕事が 忙しくて 来れない んですって…
仕方ない ですね…」

そう言って 明花ちゃんは聞き分けよく
笑顔を作る。

僕は 明花ちゃんの笑顔に苛立った。

「僕の前では… 笑顔を作るな!」

声を荒らげて怒ったのは 
後にも 先にも この時だけだった。

明花ちゃんは ビクッと肩を揺らした。

「結婚式に 母親が来ないなんて…!
泣いて 怒って 当然だろ?
僕の前では 感情をぶつけたらいい!」

それから
明花ちゃんは 子供みたいにわんわん泣いた。


いつも こうやって我慢していたのか…?
利口な理由を 無理矢理に作って 
自分に 言い聞かせて
そうやって 本心に 蓋をしてきたの…?


僕は 
明花ちゃんを 生まれたままの姿にして
優しく 優しく 抱いた。

泣いていい  甘えていい
素直に 感情を出していいよ って…
伝えた。

「奏真… さん… 寂しかった… んです…」

両手で顔を覆って 泣きじゃくりながら
保育園から遡って 現在に至るまで…

「授業参観も 体育祭も… 卒業式も 入学式も… お母さんは仕事で…。
私も… 素直に 言えなくて…。
みんなが 羨ましかったけど 仕方がない って
我慢して…」


髪を撫でて キスを落として 抱きしめる。

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