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主治医との結婚生活

第7章 奏真の話

明花ちゃんが2年目に入ると、

明花ちゃんに言い寄る新人ドクターが現れた。

今どきの 甘いマスクで、人懐っこい子 だった。

明花ちゃんの仕事ぶりと可愛さに惚れた、と
猛アピールをしていた。

明花ちゃんは のらり くらり と躱し、
「大澤先生が好きなの。 ごめんね?」と断って
いたらしいが、彼もまた明花ちゃんを諦めなかった。

僕の所にわざわざ確認に来るほど、
彼は明花ちゃんに本気だった。

だから… 
「彼と幸せになったら…?」って言ったんだ。



「私が好きなのは 奏真先生だけなのに…
どうして そんな事を言うんですか…?
そんなに… 私の想いは 迷惑ですか ?」 


いつも明るく 辛いだろう場面でも 
グッと涙を見せたことがない明花ちゃんが

この時は 僕の前で 大泣きした。

  動揺 した。

抱きしめて 慰めてあげたくなったけど
ソレは違う と全身が訴える。

明花ちゃんの想いに応えないのなら…
中途半端な優しさは残酷だ。

14年前の過ちを 繰り返しては ダメだ…!

手を伸ばしかけて…
グッと堪えた。

でも それは ものすごく 辛かった。


だって 僕は いつでも 
明花ちゃんの幸せを 願っているから…

泣かないで… 


「そんなに 迷惑なら… 諦めます…。
奏真先生への想いを… 諦めます…。」

明花ちゃんは震えながら 僕に伝えた後
走り去った。


コレでいい…

一生懸命 自分に言い聞かせる。  

なのに… この張り裂けそうな 胸の痛みは
どうしたものか…。
気持ちを 持て余す…。


そうして考えながら歩いていたら 
駅の柱に激突した。


「ちょっと? 大澤先生?! 大丈夫ですか?!」

後ろから その様を見ていたらしい 
同期の心臓外科医 原田先生に声を掛けられた。

「…原田先生 時間ありますか? 
飲みたい気分なんですけど…」 

気分がやさぐれていた。

「人妻を飲みに誘うとは…
大澤くんも大胆になったわねぇ〜」

ケタケタと笑い飛ばされた。

「いいわよ。 私、強いし、潰れないから。
勿論 先生の奢りでしょ?! ご馳走さま〜♪」

そうして 近くの 居酒屋に移動した。


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