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幸せな報復

第18章 沢子

 沢子を品定めしているかのように見つめる貞子に男は沢子への発言を必死に打ち消そうとして顔を赤くしていた。
「まあ、そんなことは沢子さん次第だし、わたしもとやかく言いませんことよ。しかし、そのお姿ではさぞお寒かったことでしょう。さあ、沢子さん、もっとこちらへ寄って…… 囲炉裏のそばへお体をお寄せになって、温かなお茶を今お入れしますわ…… でも、その前にお洋服を着た方がいいわね? ねえ、宗男、沢子さんにわたしの寝室から似合いそうな服を探してきて着せてあげて…… 沢子さん、わたしのお洋服で申し訳ないけど少しの間だけだから我慢なさってね」
 そう言うと貞子は宗男の方に顔を向けた。
「宗男、今から言うことを覚えて、まず、下着の上下、1枚ずつ、だめよ、余計なパンツとかポケットに入れないでね、匂い嗅いだりしないのよ、分かってるの? それからシャツ、パンツ、靴下、厚手のカーディガン、あなたが沢子さんに着せたい服を持ってくるといいかもね。いい? 脱がせたい服じゃないわ……」
「もう、嫌ですよ…… 貞子さま、止めてください。沢子さんが信じるではないですか」
 笑顔の宗男が沢子を見つめ片手を上げて左右に振っている。言った貞子も笑っていた。
「沢子さん、わたしはそんなことしませんから…… もう…… 貞子さま、冗談が過ぎます…… 分かりました。わたしが似合いそうな服を見つけられるか分かりませんが、適当にお持ちしますので」
「そうして…… 沢子さんはわたしと体型が同じようだからどれでも似合いそうよ」
 沢子は二人のやり取りを聞いていて自分を和ますためと知り顔がほころんだ。沢子はようやく助かった、と思った瞬間であった。

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