幸せな報復
第19章 畑野浩志の観察
恵美は勘太郎の自宅を突き止めた。彼女は物陰から様子をうかがっていると、彼の家に入っていく青年を見た。
「どこかで見たような?」
彼女はその後ろ姿に覚えがあったが、どこか見当が付かなかった。
翌日、恵美は大学へ登校し教室に入るなり相好を崩した。
「何? やはり彼? 畑野くんじゃないの?」
恵美は小躍りしたくなるほどのうれしさをぐっとこらえた。
「だめよ、こんな段階で喜んでは…… わたしにはあのにっくき中年オヤジを懲らしめるという目標があるのよ…… そうよ、この見目麗しき美少女を袖にした報いをたっぷり、しっかり、どっぷりと…… 味わせてやるからね……」
恵美は畑野浩志の顔を見ながら報復の決意を己に言い聞かせるかのようにつぶやき、湧き上がる怒りを右手で握りしめると拳をにらんだ。
しかし、その直後、どんな怒りもあの日のめくるめく幸せに結びつき消されてしまうほどの快感が全身を襲ってくる。
「ぁあ……」
たった今、怒りで体を震わせていたはずなのに、別の感覚が呼び起こされ全身を駆け巡り、異質の震えが全身を駆け巡っていく。その震えが全身に行き渡ったとき、彼女は虚脱感で立っていられないほどだ。底知れぬ快感が駆け巡る。あの忘れられない恥ずかしい体験が体に一部始終が記憶されてしまった。
「ぁあ……」
しかし、身もだえ膝が崩れそうになると、決まってその翌朝の記憶が瞬時に出現して目の前が真っ白になるのだ。
あの痴漢事件の翌朝、彼女は駅のホームで痴漢男を探した。昨日と同じ時間に痴漢男を見つけると、うれしさのあまり男にあさましくも笑顔を向けた。彼も自分を見つけてくれたと分かると喜んでくれるはずと確信していた。それなのに、その直後、彼の顔が真っ青に変わったことが手に取るように分かった。
「どこかで見たような?」
彼女はその後ろ姿に覚えがあったが、どこか見当が付かなかった。
翌日、恵美は大学へ登校し教室に入るなり相好を崩した。
「何? やはり彼? 畑野くんじゃないの?」
恵美は小躍りしたくなるほどのうれしさをぐっとこらえた。
「だめよ、こんな段階で喜んでは…… わたしにはあのにっくき中年オヤジを懲らしめるという目標があるのよ…… そうよ、この見目麗しき美少女を袖にした報いをたっぷり、しっかり、どっぷりと…… 味わせてやるからね……」
恵美は畑野浩志の顔を見ながら報復の決意を己に言い聞かせるかのようにつぶやき、湧き上がる怒りを右手で握りしめると拳をにらんだ。
しかし、その直後、どんな怒りもあの日のめくるめく幸せに結びつき消されてしまうほどの快感が全身を襲ってくる。
「ぁあ……」
たった今、怒りで体を震わせていたはずなのに、別の感覚が呼び起こされ全身を駆け巡り、異質の震えが全身を駆け巡っていく。その震えが全身に行き渡ったとき、彼女は虚脱感で立っていられないほどだ。底知れぬ快感が駆け巡る。あの忘れられない恥ずかしい体験が体に一部始終が記憶されてしまった。
「ぁあ……」
しかし、身もだえ膝が崩れそうになると、決まってその翌朝の記憶が瞬時に出現して目の前が真っ白になるのだ。
あの痴漢事件の翌朝、彼女は駅のホームで痴漢男を探した。昨日と同じ時間に痴漢男を見つけると、うれしさのあまり男にあさましくも笑顔を向けた。彼も自分を見つけてくれたと分かると喜んでくれるはずと確信していた。それなのに、その直後、彼の顔が真っ青に変わったことが手に取るように分かった。