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　ホームに立っては考え続けてきた彼は今、仁美の生まれ変わりのような女性を目の前にして心が躍っていた。彼は愛する仁美の懐かしい肉体と心に触れたい衝動を抑えきれなくなっていた。若い仁美を見て自分は過去へ戻ったような変な気持ちになっていた。彼は仁美を間近に見て湧き上がる熱いエネルギーを久しぶりに感じた。
　彼は彼女と対面して立っている。うれしくて、彼はすっかり気持ちが舞いあがっていた。
　そんな気持ちに反して、電車が揺れるたび、彼は首筋に痛みを感じていた。その痛みの原因は首に掛けていたネームプレートだった。彼はネームプレートを胸ポケットにしまうことを忘れて電車に乗っていた。そのひもが混んだ電車の中で何かに引っ張られ首に食い込んでいるのだ。ひもは目の前の彼女の豊かな胸の横を通って下に向かっていた。ICチップの組み込まれたネームプレートはドアのセキュリティにかざすため伸びるひもがついていた。それが彼女の体に絡まっているようだった。
　彼はひもからたどってプレートを回収しようとした。右手でひもをたどろうとしたが、混んでいるせいで、手のひらがどうしても彼女の体を触ってしまう。彼女に一声掛けないと外せないかもしれない。すでに彼女の体を数回触ってしまった気がした。もしかすると、彼女が彼を痴漢と思っているのでは、と思うとあわてた。目の前の彼女は下を向いて体を小さく震わせていることが彼には手に取るように分かった。
「あのぉー　ごめんなさい、僕の首に掛かったネームプレートがあなたの服に引っ掛かったみたいなのです」