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　恵美は隣に座る浩志に立て続けに質問していた。彼女は明らかに自分の匂いを吸っている奇行を誤魔化すように矢継ぎ早に質問をしていたことは明白だった。浩志には、彼女が自分の恥ずかしい愚行を隠すのに必死になっているように見えた。浩志は彼女に何かだれにも相談できない悪い状況が起きているとしか思えなかった。
「ねえぇーー　もっとお母さんのことを先日みたいに、また思い出させてあげようっか？　わたしが特別によぉ」
　恵美は顔を浩志の前にわざとらしく近づけて目を意味ありげに細めた。上唇と下唇が少しずつ開いていく。彼との距離は30㎝だった。彼女は浩志に近づき体臭を鼻から吸い込めばいつでも幸せになれた。幸せを感じると彼女は体中が弛緩し脱力状態になっていく。
「わたし……　あなたが隣にいてくれればそれだけで幸せなの……　お母さんもあなたを産んでそんな幸せな気持ちだったと思うの……　いてくれるだけでいい、そう思っていたはずよ、すべてのお母さんはそう思っている、とわたしは思うの……　だって……　血のつながっていないわたしもあなたといるとそう思うもの……　すごくしあわせよ、わたし……」
　そう言ってから彼女は浩志の顔を両手でぐっと挟んでから見つめた。そのまま、自分の胸に顔を引き寄せて乳房の上にのせた。彼女は浩志の髪の毛の匂いを深く吸い込んだ。
「あぁーーー　この匂いよぉーーー　安らぐわぁーーー　浩志くーーん、最高よぉーー」
　彼女は妄想ではなく現実に声に出していた。彼女は幸せをかみしめた。彼女は浩志に接触しながら体臭を嗅いだらどうなるのかついに試してしまった。恵美にとってはあまりにも大胆な行動だったが、これは妄想ではない。初めての体験だ。この前は手の接触だけだった。きょうはわたしの乳房と浩志の額が触れている。
「ああぁーー　浩志くーーーん、わたし、幸せ過ぎて気を失いそうだわぁーー」
　彼女はうれしさのあまり、歓喜の声を出していた。彼女の心の奥からけだもの族の欲望が堰を切って出現しようとしていた。彼女はそんな危険なけだもの族の邪心が彼女の心に出現することなど知るよしもない。それが出現したら浩志は完全に恵美にレイプされ、やがて彼は恵美の性奴隷にされてしまうだろう。