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　恵美は浩志を終始見つめながら発表を終えた。研究生全員が発表を終え、初回の研究テーマの発表は終了した。教授が締めの挨拶に立った。
「いかがでしたか？　人それぞれ未来に向けた思考は違うように、それに向かう方法も違うようです。建築もその方向性の違いに応じてそこに住む人の環境に合わせる必要があるのです。建築家がそれぞれに合った建築をデザインすると言うことです。
　それは人類が群れることで補ってきた真の理由ではないかと思います。近頃、多様性と言われていますが、アイデアは無限に広がっています。もう絞り出せない、と嘆いている人もいれば、どんどんアイデアが思いつく人もいます。しかし、それを実現するにはあまりにも社会は大きく複雑になりました。アイデアがあっても実現することが難しい。それを補ってくれる人もいる。それは群れるからこそ可能なのです。力を合わせて生きることがこれほど重要な時代はないでしょう。これから始めるきみたちの研究がされにだれかの研究を後押しすることになるかもしれません。さあ、そのことを踏まえ、この1年で研究することの意味と実践を学び卒業後、また羽ばたいてほしいと願います。きみたちはたった今、その一歩を踏み出すのです。さあ、この部屋を出て進んでください」
　話を終えた教授が研究室のドアの前に進みドアを開けた。研究生たちはカバンを持ち席を立った。教授から配布されたリストには研究テーマと連絡先のメールアドレスが載っていた。共同研究したいものへの配慮だった。
　浩志はまっさきに恵美の欄を見た。連絡先のメールアドレスを見たが、今すぐにでも恵美の発表した「触れる、触」という区分の詳細を聞いてみたかった。どんな触れるがあるのか、詳しく恵美から聞いてみたくて恵美を見た。
　研究室の研究員は総勢20名。会社のバリアフリー化、施設のバリアフリー化など研究成果は場所の数だけ需要がある。だれもが平等に生活できる世界にする。まずは見た目をしっかりしたものにする。見て、嗅いで、聞いて、話して、触って、動いて、立って、座って、どれもこれも、行動パターンは満ちあふれている。