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幸せな報復

第11章 恵美の訪問

 勘太郎は朝食の準備をして、一人だけ食卓に座り朝食を食べていた。浩志が遅れて起きてきて合流し顔を合わせる。勘太郎のスーパーは午前7時から午後7時までの営業時間だった。
「父さん、おはよう。もうすぐ夏休みなんだけど……」
「大学生最後の夏休みか? 楽しまんとな」
「うーーん、そういうわけにも行かないんだ。卒業研究を進めないといけないし…… それでさ、前にも話したけど卒業研究を共同しているガールフレンドを家に連れて来て一緒に研究しようと思うんだ。だから、うちに来たとき、紹介するから…… すっごくいい子なんだ」
「おお、前に聞いた女の子か? さぞかし、男の子っぽい子なのか? 俺は男勝りって言うの、そういう今風な子は苦手だな…… おまえがいい子って言うんだからいい子なんだろうけど…… うちで勉強でもするのか? 図書館とか、喫茶店とか…… そういう場所は行かないんだ?」
「建設業界が男の業界とかそういう感覚は古いよ…… 男女平等、性差のない社会でお互いを尊重しそれぞれの思考を持った人たちが共同することで新しいアイデアが生まれる時代だよ。
 でも、彼女はスーパーウーマンなんだ。日本の建築界を変えるかもしれない。僕は彼女を応援したい、と思っている。もちろん、大学の図書館でやったりしていたけど、家でやったほうが集中できるから…… 特に…… 彼女の希望でもあるんだ。僕を育ててくれた父さんに会いたい、っていつも言っていたんだ。とにかく、1回連れてくるから会ってよ」
「そうか…… 俺の仕事は帰りが遅いからいつ会えるか分からんぞ…… 言っておくけどやるのは……勉強だけにしておけよ……」
「……? えっ? 嫌だなぁー そんな冗談を言うんだぁー」

  *

 このときは勘太郎も浩志がその女性と大学を卒業しても影響し合って、いつまでも協力してやって言ってくれればいいと心から願っていた。将来有望な若い二人が未来永劫幸せを育んでいけることを願った。

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