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幸せな報復

第12章 始まり

「それでもいい…… 自分が蒔いた種だ…… 自分で刈り取るしかない…… 彼女を刈り取るんだ……」
 勘太郎がようやく取るべき道を導き出したとき、窓に朝日が差していた。夜明けだ。勘太郎にとってうっ屈した3カ月が終わる。犯罪を自ら償う、精算するときが来た。
 勘太郎は意気揚々と寝室を出る。前向きになった気持ちとは反対にバランスを崩しよろけた。彼はふらつく体に鞭を打ち洗面台に行き顔を洗うつもりだったが、溜めた水に顔を埋めた。数分後、苦しくなり顔を水の中から上げた。
「ぶぁっはぁー」
 顔を水から勢いよく出して深く息を吸った。空気を肺に取り込んだ。何気なく吸っている空気も顔を水に浸けることで呼吸ができない。改めて、呼吸できることに感謝する。
 彼は平凡で平穏な生活に戻らなければと思った。ぼんやりしていた思考が開放されたような気がした。勘太郎は鏡に映った真っ赤になった顔を見つめた。
「ひどい顔だな…… こんなになったのも彼女のせいだ……」
 勘太郎はつぶやくと、浩志のガールフレンドに駅で出会った朝を思い出した。
「あれは俺に課せられた試練だ……」
 
 彼はようやく身の振り方の結論を出したが、それでも、彼女が仁美に瓜二つなんて、悪魔に魅入られたとしか思えなかった。毎日、さえない日常を生きていた勘太郎はあのとき、青春の息吹を彼女に吹き込まれたように思った。一気に20代初めに心がタイムスリップしたように体に力がみなぎった。体の芯に沸く抑えられない性欲のエネルギーが「彼女の体に触れさせてくれ」と彼に懇願した。
 彼は性欲の要望を叶えるため、あのとき、無意識のうち、ネームプレートを素早く彼女の体に絡めた。ネームプレートを取り除けない振りをして彼女の体をゆっくりなで回した。彼は彼女の若い柔肌に触れるたび、顔をゆがめ苦悶の表情を見ていることに喜びを感じた。
 カバンを拾う振りしてほおやあごを彼女の豊満な胸に押し当ててもみしだいた。乳房は若くて弾力がありそれでいて柔らかだった。ほお骨で乳首を中心にもみしだいてあげたら彼女はとても気持ちよさそうに目を細めた。

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