『幸せな報復』第15章「接近する恵美」　67ページ

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幸せな報復

第15章接近する恵美

　畑中仁美も獣だった。勘太郎は発熱により出現した過去に獣として生きていた記憶が恵美によって少しずつ記憶が戻り出した。体から発散された高熱が人間から獣に変身をさせていく。生まれてから出たことのない長時間の高熱は体を変身させていく。
「俺は獣に戻るのだ……」
　今まで目を開くことさえ辛かった彼は、恵美の本質としての獣と同調するため、正常な機能を回復し始めた。弱っていた人間の身と心が強い獣に戻ろうとしている。同族だった仁美とも獣の力で惹かれた。しかし、仁美がハンターに殺されてから勘太郎の本性・獣は理性で封印されてきた。それが恵美と電車内で偶然遭遇した。
　成人した恵美は獣と交わるために仲間を探していた。あの朝、勘太郎に駅のホームで遭遇し彼の前に姿を現した。獣臭を感じた彼は恵美の獣を感じるため接近した。
「きみは僕を獣に戻すため接近した……　僕はきみの中の獣を探るためきみの全身に触れて確認していたということだな……」
　恵美は彼の言葉を聞いた瞬間、獣が反映する未来が見えた。お父さんはわたしに痴漢を繰り返すことで獣に変身させてくれていた。
　恵美は勘太郎から受ける手の感触を想像しただけで、恵美の獣の血が騒いだ。恵美の記憶に獣の子孫を作る使命が呼び起こされた。
「お父さん、獣の仁美さんは殺害された。でも、今はわたしがお父さんの獣の遺伝子を目覚めさせてあげる……　わたしはお父さんを獣に目覚めさせるために生まれた獣よ。だから、お父さんはあたしの存在に刺激を受けて獣に戻ろうと遺伝子が動き始めた。電車で一緒になったのは偶然ではない。わたしたちの出会いは導かれた。運命の糸でつながっていた……　前にお父さんに言ったことあるけれど……　お父さんとわたしは前世で出会っていたと思うの、お父さんもそう思わないかしら？」
「そうだね……　獣族はハンターによって自動車事故に見せ掛けられ抹殺され始めた。だから、身を隠す道を選ぶしかなかった、と言うことだ……　根本から獣の痕跡を消すため、記憶の深いところに押し込んで我々は20年間ひっそり生きながらえてきたんだな……　恵美さんもそうなんだろ？　きみの身体能力は全力を出したら獣なんだろ？」
　しかし、勘太郎は直ぐこの言葉を否定した。