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幸せな報復

第15章 接近する恵美

 やがて、年老いて彼が射精できなくなったとき、彼女らは彼の老いに対し涙が涸れるまで泣いて悲しむ。泣き尽くしたとき未来を担う新しい種に希望を託し彼女たちもまた彼を追うように老いて生を終える。
 けだもの族に数万年伝わる性家族の掟だ。掟に背くものには死を与えるだけだ。けだもの族のハンターは掟を存続させるために存在する。彼らの掟に背くものには徹底した制裁を加えた。
 だからこそ、自分の命を次につなぐため、細心の注意を払い理想の性奴隷を見つけ、性家族をつくる。彼女たちは満員電車という猟場で、自ら放つ妖艶な裸身と裸心を強調し、理想のオスを誘い込むため日々努力し精進してきた。彼女たちはこの狩りに万感の思いを抱き全力で参戦した。このために今まで生きてきた、と言っていい。彼女たちにとっての性交は自らの命の継承だ。
 彼女らは自分たちの念願成就を胸中に抱き、何万回となく満員電車に乗り、幾日という時間を掛け、理想的性奴隷のオスと遭遇することにかけた。
 機会は多くあればあるほど優秀なオスに近づける。大切なオスを見つければ、メス5匹はけだものエリアにあるハーレムにオスを拘禁し、メス5匹はそれぞれが揃って満足できる交尾をし確認を重ねる。そうして、なおかつ、選ばれしオスはメスを快楽に導くため己が生涯を掛けて奉仕をしていかねばならない。奉仕することを諦めたり、疲れたり、メス1匹とて交尾をためらうことがあってはならない。
 理想のターゲットを見つけるまでリーダーは次のターゲットを目指す。彼女は隣り合わせた別のイケメンにうっとりした目を向け相手の胸に額を押し付ける。
 彼女たちはうれしそう喜び痴漢をするオスの幸せに満たされた顔を見るとうれしかった。それだけで幸せを感じられた。この最低のくずに痴漢されることでわたしの体が喜ぶのだ。彼女の体の一部に与えられる喜びが全身を駆け巡った。
「もっと…… あたしに触るのよ」
 感極まったリーダーは、触るオスの手を握り引きずるように電車を降りた。オスはこのとき駅員に突き出されると思い絶望する。男たちは力の限り女の手を振り払おうとするが、女の力は桁違いに強く男の手には負えなかった。男は片手をつかまれたままホームを引きずられていた。

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